多頭飼いの話

最初に。
私自身、多頭飼いの経験はないので、他の経験ともしもを想像したことをまとめてみたものです。
100組の主従がいれば、100通りの関係があることは承知の上です。
二人の間にある気持ちも同じくいろいろな形があるかと思いますが、つぶやく上では「好き」の一言で統一します。
自分のしっくり来る言葉で置き換えて読んでいただければと思います。
Sさんを「主」Mさんを「猫」と書いているのも、ほかに良い表現が思いつかなかっただけです。





多頭飼い。
最初から、そういうことも前提という関係だったらいいでしょう。
前提でなくても、主が絶対で何をしてもされても信じられてついていけるような関係を作っている人も、問題ないんでしょう。
納得済みならいいんですよ。そのまま良い関係を貫いてくれれば。

問題は、そんな前提なんてまったくなく、飼い猫は自分だけなんだろうな…と思うような関係を作ってきていた場合。
それが猫さんだけの思い込みだったとしても、思い込むような何かを飼い主さんが与えてきたわけで。
なのにいきなり「もう1匹飼う」とか言われたら、パニックを起こしても別におかしいことじゃない。
信じていたものが変わって、環境が激変するわけだから。


そのときに、まず猫さんがするべきことは。
泣こうが、怒ろうが、きっとその二匹目さんがやってくることは変えられないことを理解すること、だと思う。
女に泣いて怒られただけで「飼う」と決めた猫を放り出すような覚悟の軽い男を主とは呼びたくないでしょう?

次に、自分との関係がどうなるか、主さんからはっきり言ってもらう。
多頭飼いだというからには一匹目を手放すという話ではないのは理屈でわかるでろうけど、直接言葉で確認できれば安心感がきっと違う。
そこで信じてないのか?と怒られたら…それはそれで、主さんの考えとか、主さんが今の猫さんの状況がどの程度見えているのかとかが透けて見えると思う。

そして。
もう1匹飼うと伝えられたとき、自分の反応を見た主さんの反応、その後の話し合いの内容。
それらを思い返して、それでも主さんのことをまだ「好きだ」と思えるか、結局はそれがすべてなんじゃないのかな。

好きと思えるなら思えるで、今度は先のこと考える必要がある。
二匹目さんが来るのは変えられない。これからも主さんの向こうに彼女がいることをずっと意識していかなければならない。
自分はいらなくなるんじゃないかという不安を主を信じて乗り越えることができるのか、ずっと抱えていかなきゃならないのか。
それ抱えながらでも、主さんの側にいたいのか。
それらを秤にかけて、まだ好きの気持ちが勝るなら、折り合ってく努力をしていくしかない。


たいていの場合、時間というのは色々な気持ちを落ち着かせてくれる。
だから、結論を急ぎすぎる必要はない。
悲しさとか、腹立ちとか、不安とか…少し落ち着いてから、自分の「好き」の気持ちを見直してみるといいと思う。
ただの意地や執着心なのかどうかとか、時間を置いたほうが冷静に見直せるんじゃないかな。
時間が過ぎるにつれ、主さんの対応の変化もあるだろうし。


あと、習慣は案外簡単に変わるものだ、と思っておいた方がいい。
そして、変わってしまったものは以前とまったく同じには戻らないだろう、と思っておいた方がいい。
時間が経てばまた近い形に落ち着けるかもしれないけど、期待しすぎるよりは新しく習慣に出来る形を探していく方が、気持ち的に楽かも。



以前散々話題になっていた頃、下の子が生まれた子供や本物の猫の多頭飼いの例えもしたけど、あまり適切ではなかったなと思う。
子供を見捨てる親も、保護した猫を捨てる人間もほとんどいないけど、男女の関係にはそこまで責任はないわけで。
夫婦だって、世間体だ子供だ事後処理だ情だと面倒が多い分ブレーキがかかるとはいえ、離婚なんて普通にあるのだから、そんな制約のない関係ならなおのこと。
主従の関係は普通の男女関係とはまたちょっと違うけど、気持ちの移り変わりは他人が努力だけで止められるものではないしね。
不安になるな、なんて無理な話だと思う。

猫さんは、不安になるのは仕方ない、と認めたうえで、その気持ちと折り合っていった方が楽だと思う。
主さんは、猫が不安になるのは仕方ない、と受け入れて対処した方がこじれないと思う。
信じていれば大丈夫、なんてお互いに解消の権利を持つ関係には通じないんじゃないかな。
いや、信じてる、私は大丈夫、俺は大丈夫って言える関係とその自信は、本物だったらうらやましいとも思うけどね。


環境に上手になじめる子、無条件で保護者を信じられる子がいる一方で。
子供だって、親が絶対自分を捨てないと信じきれない子だっている。
猫だって、多頭飼いが受け入れられない子もいる。
うちの子は大丈夫と信じてストレスに負けるまで気づかない親や飼い主もいる。
自分はどんなタイプか、相手はどんなタイプか、その両方をお互いが考えてどっちもが自分の「常識」を押し付けずに解決して行くしかないんだろう。


どんな言葉を重ねてみても、やっぱり基本はどっち側も「好き」の気持ちひとつ。
主さんが一匹目さんも大事で好きなら(だからこその多頭飼いなんだろうけど)それを示して行くしかないし、猫さんが飼い主さんをどうしても好きなら現実を受け入れて行くしかない。

なんて。
偉そうに呟いていても、もし自分がその立場に置かれたりしたら、取り乱さない自信はないかも^^;
最後の最後は、ご主人様を好きの一心で受け入れざるを得なくなる気はしているけど。